執筆者
池田クリニック
院長池田 篤紀
資格・所属学会
- 医師、医学博士
- 日本医師会認定産業医
- 日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
刺身や寿司など、生魚を食べたあとに突然強い胃の痛みが出た場合、原因の一つとしてアニサキスが考えられます。
アニサキスは、食生活と密接に関わる寄生虫であり、誰にでも起こり得る身近な病気です。ここでは、アニサキスについて、症状や検査、治療、予防法までを詳しく解説します。
アニサキスとは、魚介類に寄生する寄生虫(線虫)です。
人がアニサキスの幼虫を含んだ生魚を食べることで、胃や腸の粘膜に入り込み、強い症状を引き起こします。
アニサキスは、サバやアジ、サンマ、イカ、サケ、カツオなどに多く見られます。特に内臓部分に寄生していることが多く、魚が死亡した後に身の部分へ移動することもあります。
冷凍や加熱で死滅しますが、生食では感染のリスクが残るため注意が必要です。
アニサキス症の主な症状は、突然起こる強い胃痛や腹痛です。
食後数時間から半日ほどで発症することが多く、吐き気や嘔吐を伴うこともあります。
アニサキス症には、以下の種類があります。
胃に寄生し、みぞおちの激しい痛みが特徴です。
腸に入り込み、数日後に腹痛や腸閉塞様の症状を起こすことがあります。
また、アニサキスアレルギーにも注意が必要です。
これは寄生虫そのものではなく、アニサキスの成分に対するアレルギー反応で、蕁麻疹、かゆみ、呼吸困難、アナフィラキシーなどを引き起こすことがあります。アニサキスが死滅していても起こる可能性があります。
軽い胃もたれや一時的な腹部不快感で、自然に改善する場合は、過度に心配する必要はありません。
しかし、生魚を食べた後に強い胃痛が続く場合や、我慢できない痛みがある場合は、早めの受診が重要です。
アニサキス症の診断には、胃カメラ(上部消化管内視鏡検査)が有効です。
内視鏡で胃の粘膜を直接観察することで、アニサキス虫体をその場で確認・摘出できます。
腸アニサキス症が疑われる場合は、症状や経過をもとに慎重に判断します。
アニサキスの治療は、症状の出方や寄生している部位によって異なるため、アニサキス症のタイプを見極めたうえで、適切な治療を行うことが大切です。
胃にアニサキスが寄生している場合、胃カメラによる虫体の摘出が最も確実な治療法です。
内視鏡を使って直接アニサキスを取り除くことで、原因そのものを除去でき、治療後は速やかに痛みが改善するケースがほとんどです。
薬だけで自然に治ることを期待する方もいらっしゃいますが、アニサキスが胃壁に刺さったままだと強い痛みが続くため、早期の内視鏡治療が推奨されます。
腸に寄生した場合は、胃カメラで直接確認・摘出することが難しく、症状や経過をみながらの保存的治療が中心となります。
軽症の場合は、痛み止めや点滴などで経過観察を行い、アニサキスが自然に死滅・排出されるのを待ちます。
ただし、強い腹痛が続く場合や、腸閉塞が疑われる場合には、入院治療や外科的対応が必要になることもあります。
アニサキスアレルギーは、寄生虫そのものではなく、アニサキス成分に対する免疫反応によって起こります。
蕁麻疹やかゆみなどの軽症例では抗アレルギー薬を使用し、呼吸困難や全身症状が出た場合には、迅速な医療対応が必要です。
アニサキスが加熱や冷凍で死滅していても、アレルギー反応が起こることがあるため、注意が必要です。
症状が軽く、経過観察となった場合には、胃腸への負担を減らすことが大切です。
刺激物や脂っこい食事、アルコールを控え、消化の良い食事を心がけましょう。
痛みが悪化する場合や症状が長引く場合には、早めに再受診してください。
アニサキスは、日常の食生活の工夫によって予防が可能な寄生虫です。
以下のポイントを意識することで、感染リスクを大きく下げることができます。
アニサキスは熱に弱く、60℃以上で1分以上の加熱で死滅します。
焼き魚や煮魚など、中心部までしっかり火を通すことが重要です。
生食する場合は、−20℃以下で24時間以上冷凍することで、アニサキスは死滅します。
家庭用冷凍庫でも対応可能ですが、十分な時間を確保することが大切です。
魚を購入したら、できるだけ早く内臓を取り除きましょう。
アニサキスは内臓に多く寄生しており、時間が経つと身の部分へ移動することがあります。
調理中に目視で確認できる虫体は取り除きますが、見えない幼虫も存在するため、過信は禁物です。
また、酢・塩・わさびなどの調味料ではアニサキスは死滅しません。
しっかり加熱、または冷凍することが最も確実です。
アニサキスは、生魚を食べる機会の多い日本では、誰にでも起こり得る病気です。
突然の強い胃痛が出た場合は、自己判断せず、早めに医療機関を受診しましょう。
胃カメラ検査により、原因の特定と迅速な治療が可能になります。