執筆者
池田クリニック
院長池田 篤紀
資格・所属学会
- 医師、医学博士
- 日本医師会認定産業医
- 日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
普段、見慣れた便の色は黄色〜茶色です。そのため急に真っ黒な便が出ると、驚かれる方が多いと思います。
黒色の便は、消化管からの出血が原因で起こることがあります。そのため、できるだけ早く医療機関を受診したほうがよいサインだと捉えましょう。黒色便の仕組みや原因、検査、治療、受診の目安についてわかりやすく解説します。
黒色の便は、医学的に「黒色タール便(melena:メレナ)」と呼ばれ、胃や十二指腸などの上部消化管で出血が生じ、血液が消化液と混ざって便が黒く変化した状態を指します。血液が消化管の中を移動する過程で消化液にさらされるため、黒色になって出てきます。鉄臭い強い臭いとベタつくのが特徴です。
ただし、すべての黒っぽい便が内臓からの出血を意味するわけではありません。食生活や飲み物、薬の影響で便が黒く見えることもあります。
例えば、イカ墨や海藻類、鉄剤、特定の薬(例:ビスマスを含む薬)などを摂取した後に便が黒くなることがありますが、これらは消化管からの出血とは関係なく一時的な変化です。
胃潰瘍や十二指腸潰瘍など消化管の粘膜が傷つき出血すると、血液が消化されながら腸を進むため黒色便となることがあります。こうした状態は黒色タール便と呼ばれ、消化管のどこかで出血が起こっている可能性が高いと考えられます。
このほか、胃炎や食道静脈瘤、裂けた血管などが原因となることもあります。出血が続くと、貧血やめまい、ふらつき、だるさなどの症状を伴うことも多く注意が必要です。
イカ墨や海藻類などの黒い色素を含む食品、鉄分補助薬、ビスマスを含む薬などは消化管を通過する際に便の色を黒く変えることがあります。
これらは体へ大きな害を及ぼすものではなく、食事内容や薬を変えれば自然に元の色に戻ることもあります。ただし、便の黒さだけでなく、ほかの不調を伴っていないか注意することが必要です。
黒色便自体が病気のサインであることもありますが、以下のような症状を合わせて認める場合は、より注意が必要です
これらの症状は、出血が多い場合や貧血を伴う場合によく認められる症状です。早めの受診をお勧めします。
黒色の便が見られた場合、まずは医師が詳細な問診を行い、症状の経過や食事、薬の状況を確認します。そのうえで必要な検査が検討されます。
また、場合によっては造影CTや超音波検査などの画像診断が追加されることもあります。
治療は、黒色便の原因となっている病気に応じて行われます。
例えば、
| 潰瘍性病変の場合 | 胃酸分泌を抑える薬や粘膜保護薬、ピロリ菌の除菌治療などが行われます。 |
|---|---|
| 出血が強い場合 | 内視鏡的止血処置や入院治療が必要になることがあります。 |
| 薬や食事が原因の場合 | 薬の変更や食事の見直しで、自然に改善するか経過を見ていきます。 |
治療には、それぞれリスクや経過観察が伴います。医師と相談のうえで最適な治療計画を立てることが必要です。
黒色便の予防には、消化管を刺激しにくい生活習慣が役立ちます。具体的には、刺激物の摂取を控える、過度な飲酒を避ける、胃腸に負担をかける薬を自己判断で長期間使わない、定期的な健康診断を受けるといったことが基本になります。便の色に変化があった場合は軽視せず、しばらく観察したうえで続くようなら受診すること安心です。
黒色の便は、時に重要な病気のサインであることがあります。特に、便の黒色が数回以上続く場合や、腹痛・めまい・倦怠感などの症状を伴う場合には、早めに医療機関を受診し、検査を受けることが大切です。また、薬や食品が原因のこともありますが、自己判断せず専門医に相談すると安心で適切な対応ができます。
気になる症状がある方は、ぜひ早めの受診で健康を守っていきましょう。