執筆者
池田クリニック
院長池田 篤紀
資格・所属学会
- 医師、医学博士
- 日本医師会認定産業医
- 日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
過敏性腸症候群(Irritable Bowel Syndrome:IBS)は、検査を行っても腸に明らかな異常が見つからないにもかかわらず、腹痛や便通異常が慢性的に続く病気です。命に関わる病気ではありませんが、日常生活の質を大きく低下させることがあり、適切な理解と対処が大切です。
過敏性腸症候群は、腸の動きや感覚が過剰に反応することで症状が現れる機能性腸疾患の一つです。ストレスや生活習慣の影響を受けやすく、腸そのものに炎症や腫瘍などの器質的な異常は認められません。
症状の現れ方によって、下痢が主なタイプ、便秘が主なタイプ、下痢と便秘を繰り返す混合型、いずれにもはっきり分類されないタイプに分けられます。
過敏性腸症候群の代表的な症状は、腹痛や腹部の不快感と便通異常です。腹痛は排便によって軽くなることが多く、食後や緊張時に強くなる傾向があります。
下痢型では、突然の便意や水様便、外出前に症状が強くなるといった特徴がみられます。一方、便秘型では排便回数の減少や残便感、強くいきまないと便が出ないといった症状が目立ちます。また、腹部膨満感やガスが溜まった感じを訴える方も少なくありません。
過敏性腸症候群の原因は一つではなく、いくつかの要因が関与していると考えられています。腸の動きが過剰または低下すること、腸の知覚過敏により通常では気にならない刺激を痛みとして感じてしまうことが挙げられています。
さらに、自律神経の乱れやストレス、睡眠不足、不規則な生活習慣などは症状を悪化させる要因となります。過去の腸炎をきっかけに発症する場合もあり、腸内環境の変化が関係していると考えられています。
過敏性腸症候群の診断では、まず他の病気が隠れていないかを確認することが重要です。問診で症状の経過や特徴を詳しくお聞きし、必要に応じて血液検査や便検査を行います。
血便、体重減少、発熱、夜間の腹痛などがある場合には、大腸カメラ検査などの精密検査を行い、大腸がんや炎症性腸疾患などを除外します。これらの検査で異常がなく、症状の特徴が一致する場合に過敏性腸症候群と診断されます。
治療は、症状のタイプや程度に応じて行います。まずは生活習慣の見直しが基本となり、規則正しい食事や十分な睡眠、適度な運動が重要です。
症状に応じて、腸の動きを整える薬や整腸剤、下痢止め、便秘薬などを使用します。また、ストレスが強く関与している場合には、症状を和らげるための薬を併用することもあります。治療の目標は、症状を完全になくすことだけでなく、日常生活を支障なく送れる状態を維持することです。
過敏性腸症候群では、症状を悪化させるきっかけを知り、上手に避けることが大切です。暴飲暴食を控え、刺激の強い食事や過度なアルコール摂取を避けることが勧められます。
また、ストレスを溜め込まないことも重要です。リラックスできる時間を意識的に作ることが症状の安定につながります。便意を我慢せず、腸のリズムを整えることも予防の一つです。
過敏性腸症候群は、適切な診断と治療によって症状をコントロールできる病気です。一方で、似た症状を示す病気が隠れていることもあるため、自己判断は禁物です。
腹痛や下痢、便秘が続く場合や、日常生活に支障を感じている場合には、早めに医療機関を受診し、必要な検査を受けることをおすすめします。症状に合った治療を行うことで、安心して日常生活を送ることが可能になります。