執筆者
池田クリニック
院長池田 篤紀
資格・所属学会
- 医師、医学博士
- 日本医師会認定産業医
- 日本内科学会認定医・総合内科専門医・指導医
- 日本消化器病学会 消化器病専門医
- 日本肝臓学会 肝臓専門医
- 日本消化器内視鏡学会 消化器内視鏡専門医
ある日突然、強い腹痛とともに血便が出て驚いて受診される方が少なくありません。
その原因の一つとして考えられるのが、虚血性腸炎です。
比較的よくみられる腸の病気ですが、症状の出方によっては他の疾患との見極めが重要になります。
ここでは、虚血性腸炎について、症状や原因、検査・治療、予防までをわかりやすく解説します。
虚血性腸炎とは、大腸の血流が一時的に低下することで、腸の粘膜に炎症や障害が起こる病気です。
血管が詰まるわけではなく、血流不足が原因となる点が特徴です。
主に中高年以降の方に多く、特に女性に多いとされています。
多くの場合、一過性で自然に回復しますが、症状の強さや経過によっては注意深い経過観察が必要になります。
虚血性腸炎の代表的な症状は、突然起こる腹痛(特に左下腹部)と血便です。
そのほか、下痢、便意が頻回になる、腹部の違和感などを伴うこともあります。
痛みは急激に始まることが多く、「今まで経験したことのない腹痛」と表現される方も少なくありません。
多くは軽症で、数日以内に症状が改善しますが、腹痛が強く続く場合や、出血量が多い場合には注意が必要です。
虚血性腸炎の原因は、腸への血流が一時的に不足することです。
具体的には、以下のような要因が関係すると考えられています。
特に便秘がちな方や、普段から水分摂取が少ない方は発症リスクが高まります。
虚血性腸炎は、症状だけでは他の病気と区別がつきにくいことがあります。
似た症状をもつ疾患としては、以下のものが挙げられます。
特に血便を伴う場合は、自己判断せず医療機関での評価が重要です。
虚血性腸炎が疑われる場合、症状の経過や発症状況を詳しく確認したうえで検査を行います。
診断に有用なのが、大腸カメラ(下部消化管内視鏡検査)です。
内視鏡検査では、腸の粘膜の発赤、浮腫、びらんなどを直接確認することができ、他の疾患との鑑別にも役立ちます。
症状が強い急性期には、無理に内視鏡を行わず、症状が落ち着いてから検査を行う場合もあります。
また、血液検査や便検査、CT検査などを組み合わせて総合的に診断します。
虚血性腸炎の治療は、腸の血流低下が一時的であることが多いため、保存的治療が基本となります。
症状が軽い場合は、安静と食事制限、水分補給を行いながら経過をみます。腹痛が強い場合には、鎮痛薬を使用することもあります。
腹痛や血便が強い場合、脱水を伴う場合には、点滴による補液や絶食を含めた入院治療が行われることがあります。また、感染性腸炎との鑑別が難しい場合や、二次感染が疑われる際には、抗菌薬を使用することもあります。
多くの場合は数日〜1週間ほどで症状は改善し、手術が必要になることはまれですが、症状が長引く場合や悪化する場合には、慎重な経過観察が必要です。
虚血性腸炎の予防には、腸の血流を保ち、便秘や脱水を防ぐ生活習慣が重要です。
< 食事のポイント >
< 運動のポイント >
日常生活のちょっとした工夫が、再発予防につながります。
虚血性腸炎は、突然の腹痛と血便をきっかけに発見されることが多い病気です。
多くは自然に改善しますが、似た症状を示す病気も多いため、適切な検査が重要です。
症状が気になる場合は、我慢せず早めに医療機関を受診し、必要に応じて内視鏡検査を受けることをおすすめします。